美容室の開業資金はいくら?資金調達方法も解説

  開業を考えた時に、気になるのはやはり資金のことではないでしょうか?

美容室を開業するには多くの場合、数百万円以上の資金が必要です。これだけの大金を全額自己資金で開業する方はごく稀で、大多数の方は自己資金を元に、金融機関などから融資を受けて開業しています。

資金関係の中で最初に把握するべきことは自己資金です。 融資を受ける上で自己資金がいくらあるかは、とても重要なポイントとなってきます。  

今回は自己資金と資金調達方法について解説して行きます。 方法は様々ですので、それぞれの特徴を理解しながら組み合わせて利用しましょう。

 

1. 自己資金はいくら必要?

融資を考えている方の条件はそれぞれ違いますし、いくらあれば安心という明確な基準は ありませんが、自己資金は多ければ多いほど良いです。

もちろん、自己資金の多い方ばかりではありません。 その場合、融資も視野に入れ総合的に見て資金調達をすることになります。 資金調達の方法は様々ですが、美容室の開業では「日本政策金融公庫」からの融資を利用する方法が一般的です。

参考として、開業の際に融資で利用するケースが最も多い「日本政策金融公庫の新創業融資制度」から自己資金要件を抜粋しました。

 

自己資金要件

 

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方。

 

ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。

 

【日本政策金融公庫・新創業融資制度】より引用

 

  つまり、

・開業資金総額の10分の1以上の自己資金の用意が必要
・ただし、現在美容室に「勤務」していて、美容室を開業するなら自己資金の用意は不要

 

とのことです。  

これを見ると、 「開業までに1,000万円かかるけど、自己資金が100万円あるから、残りは融資を受けよう」、「自己資金が全くないけど、美容室に勤めているから全額融資してもらおう」 と思ってしまいますよね。

しかし、実はこれは間違いなのです。 これはあくまでも「要件」なので、実際に融資されるかは別になります。

日本政策金融公庫では、実際に融資を受けた開業者の方へのアンケートを実施、公表していますので、いくらの自己資金を用意していて、どれだけの融資を受けることができたのか、参考として見てみましょう。  

【日本政策金融公庫「2020年度新規開業実態調」】

上記の例の内容を要約しますと、約1,200万円の創業資金に対して、270万円の自己資金と親族・知人などから80万円あわせて350万円を自分で調達。 残りの850万円は金融機関からの融資を受けたとのことでした。

つまり、開業資金の約3分の1は自分で調達して、残りの3分の2は融資を受けた人が多いという結果になります。 こちらは平均ではあるものの、現実的に融資を実現する上で目指していく基準の数字となるでしょう。  

 

2. 開業資金の3分の1がない場合は?

では、開業資金の3分の1がない場合、融資は受けられないのかと言うと、そうではありません。 融資の審査は様々な視点から見られ、総合的に判断されます。

自己資金が3分の1に満たない場合でも、他の部分で金融機関を納得させられるポイントがあれば、審査は通る例もあります。 自己資金が少ないから…と諦めず、事業の堅実さ、熱意、伸び白など、自信がとても重要です。  

 

3. 自己資金が全くない場合は?

現代は様々な情報が飛び交っていますが、その中には、「自己資金ゼロ!融資の獲得方法」など、いろいろな言い回しで書いてある情報もよく見かけます。

たとえば、「多めに借りて自己資金は使わず開業、自己資金は実質0円」など、怪しい内容なものも多く存在します。 しかし、開業はあくまでスタートであり、ゴールではありません。 もしも、見せ金や架空、水増し見積もりなどの方法で金融機関を騙して融資を受けようとしても、経験を持った金融機関の融資担当者は見逃しません。

開業できたとしても、不正が少しでも発覚した時点で信用は一気になくなり、一括返済を求められる可能性があります。

また、万が一融資されたとして、実際の借入れ比率が高すぎると、事業を存続させるのは非常に厳しいでしょう。 自己資金がゼロでの開業は、メリットがありませんし、取るべきリスクではありません。  

 

4. 様々な資金調達方法

・自己資金

個人の場合は、自分で貯めたお金が自己資金になります。 たとえば、会社員の方が独立・起業する場合、独立にそなえて貯金していた通帳の残高や、給与が振込みになっている通帳の残高が自己資金の残高となります。 よく言われる「見せ金」とは、これらの通帳に一時的に他者から借りるなどして入金されたお金のことをいいます。 これは自己資金とは認められません。  

 

・親族・知人からの支援

困った時に頼りになるのはやはり親族や知人です。資金調達でも親族からの支援金は大変心強いです。 特に融資では、自己資金以外に親族からの支援金があった場合、融資担当者も安心するでしょう。  

 

・日本政策金融公庫からの融資

美容室の開業で最も多く利用されている資金調達方法です。 オーナーへの貸出しを専門にしている金融機関であり、オーナーにとってメリットがたくさんあります。

 

日本政策金融公庫からの融資での主なメリット

・低金利

固定金利で2~3%ほどかかります。若者や女性の起業を支援しており、条件によっては1%台になるケースがあります。

 

・無担保・無保証人

オーナーを積極的に支援していく金融機関のため、個人の借入れでも担保、保証人を不要としています。

条件を満たせば、誰でも融資を受ける資格があります。

 

・入金が早い

民間の金融機関に比べて、融資の決定・実行が早く、オープン前に借入れが可能です。

 

  ・制度融資

金融機関・地方自治体・信用保証協会の3者が協力して、融資を行います。 信用保証協会が保証してくれるので、銀行はお金を貸しやすくなります。

デメリットとしては、3者が絡む審査のため時間がかかる場合があります。 また、民間金融機関は美容室の営業許可を得ないと融資ができないといった場合があります。  

 

・ローン(クレジット)リース

融資は「お金を借りる」ですが、ローン(クレジット)、リースは「立て替えてもらう」という考え方になります。

・ローン(クレジット)
クレジット会社が利用者に代わって設備や物件の料金を立て替えて支払い、代金をクレジット会社へ後払いする方法です。
クレジット契約期間が終了すると所有権は利用者へ移り、利用者の資産となります。金額等を考慮して、支払回数、または月々の支払額を決定します。
  ・リース
リース会社が利用者に代わって設備や物件を購入し、一定期間貸付けする方法です。 利用者はリース会社と契約を結び、毎月一定額の料金をリース会社へ支払います。 リース契約期間が終了すると、返却または再リース契約を結ぶことになります。
この方法は、契約期間終了後、所有権が利用者へ移ることはありません。 契約期間は対象の物件や設備の耐用年数によって決まります。

 

  ・店舗リース

店舗そのものを作ってもらい、かかった費用をリース料という形で月々支払っていく方法です。 リース会社が物件を契約、内装工事を行い、美容器具・設備を揃えて店舗を作ります。 その店舗をオーナーに貸付け、オーナーは月々の賃料などを含めたリース料を支払います。

この方法では、美容室を作る費用のほとんどをリースすることになるので、初期費用を大幅に抑えることができます。

 

まとめ

自己資金は開業資金の3分の1を目標にしましょう。 3分の1は必須ではありませんが、自己資金ゼロや見せ金などはNGです。 資金調達の大前提として、自己資金・信用・事業計画書の3つをしっかり作って行きましょう。

上記のどの方法でも、必ず3つは審査されます。 「開業に向けてコツコツ貯金してきたか」、「月々の支払いが延滞していないか」、「美容室のことを計画的に考えているか」、まずはこの3つをクリアしましょう。